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特定商取引法

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美容医療にも特定商取引法が適用されます

美容医療サービスにも特定商取引法が2017年12月11日より適用されるようになりました。

特定商取引法は、消費者保護と健全な市場形成の観点から、事業者の不適正な勧誘・取引を取り締まるルールや、クーリング・オフ等トラブル防止・解決のための民事ルールを定めています。

美容医療サービスで問題となるのは、特定商取引違法の対象となる取引類型の中の、政令で定める「特定継続的役務」です。

「特定継続的役務」とは、一定期間を超える期間に渡り、一定金額を超える対価を受け取って提供するサービスのことです。

具体的に美容医療サービスにおいて、以下の要件を満たすサービスが特定継続的役務となります

  1. 美容を目的とするものであって、
  2. ①脱毛②にきび、しみ、そばかす、ほくろ、入れ墨その他の皮膚に不着しているものの除去又は皮膚の活性化③肌のしわ又はたるみの症状の軽減④脂肪の減少⑤歯牙の漂白を一定の方法により行う場合

そして、このようなサービスのうち、契約期間が1ヶ月を超え、かつ金額が5万円を超える場合については、お客様は、お客様が契約書面を受領した日から8日以内であれば、当該美容医療サービス契約の解除することができたり(クーリングオフ)、契約期間の途中で契約を解除した場合には、サービスを受けた分についてだけ対価を支払えばよいことになります。

また、書面交付等の義務や勧誘規制等も課されます。

なお、上記の(2)①~⑤に該当するとしても、(1)美容を目的としない場合は特定商取引法は適用されません。

例えば悪性と判断されたほくろを除去する場合には、特定商取引法は適用されないことになります。

今までは、美容医療サービスに関しては、医療法の規制があったため、特定商取引法は適用されていませんでした。

ところが、近年の美容医療サービスの普及に伴い契約者トラブルが増加してきたことから、美容医療サービスにも特定商取引法が適用されることとなったのです。

美容医療サービスに特化しているクリニックはもちろん、一般的な医療サービスと共に美容医療サービスも提供しているクリニックでは、どのような場合に上記の要件に該当するかわかりにくいことがあるかと思います。

以下では、上記の要件のうち、特にわかりにくい契約期間が1ヶ月を超え、かつ金額が5万円を超える場合にあたるかについて、よくある疑問点についてご説明します。

Q1 当クリニックでは一般的な医療サービスに加え、美容医療も行っています。特段コース契約は設定しておらず、治療の都度の支払いとなっています。しかし、結果として一連の治療が1ヶ月以上となり、治療費総額が5万円以上となってしまった場合は、特定商取引法の対象となりますか?

特定商取引法で美容医療が該当する類型は、特定継続的役務提供です。

特定継続的役務提供に該当する要件として、期間が1か月を超え、金額が5万円を超えるというものがあります。

ご相談のような場合、消費者がその意思で自由に治療を終了できるのであれば、特定継続的役務提起用に該当しないため、特定商取引法は適用されません。

しかし、複数の治療の契約が「実質的に一体」と判断される場合には、特定商取引法が適用されます。

たとえ、一定期間通院することを義務付ける契約がなく、支払いもその都度しているとしても、例えば医者から完治するためには継続して通院する旨言われれば、事実上「消費者がその意思で自由に治療を終了でき」ないため、その都度の契約が実質的に一体であると判断され、特定商取引法が提供される可能性があります。

そこで、特定商取引法の適用を受けないためには、初回から当クリニックで継続して治療を受ける必要がないこと、お客様の自由な選択にまかされていることを明確に説明するのがよいでしょう。

また、治療の性質として、途中でやめることができないことが明らかな場合で、その期間が1ヶ月以上となり、治療費総額が5万円以上となる場合は、特定商取引法に基づいて書面の交付等をしなくてはなりません。

Q2 複数の治療が「実質的に一体」と判断されるのは具体的にどのような場合でしょうか?

治療の都度の契約、支払いであったとしても、治療が複数回にわたった場合で、特定継続的役務提供にあたるかは、①治療の継続について消費者を拘束する事情が存在し、②消費者の選択の自由が妨げられている、と認められるかで判断されます。

これらの事情があるかは、契約の実態から客観的に判断されます。

消費者庁は、そのウェブサイトで、「実質的一体」にあたるものとして、以下の例をあげています

  1. 入会金、施設利用料等の名目で高額の初期費用を徴収しており、当該費用が その後の複数回にわたる治療の対価の一部であると判断される場合
  2. 次回も来院しなければ後遺症が残る可能性がある」、 「当院でなければ治療 できないので、他の病院にいっては駄目」と告げる等、消費者に対し継続的 に治療を受けることを事実上強制するような場合
  3. 契約の当初時点において、例えば1か月を超える期間をかけて使用される分 量の医薬品(美容を目的とするものに限る。)や健康食品等を関連商品として 販売し、医師の指導の下で服用等を行うものとしている場合等、関連商品の 販売が治療と一体をなすと判断される場合

逆に、消費者の選択の自由を妨げられないため、特定商取引法が適用されないとされる場合は、下記のような場合です

  1. 初回治療時に、「このような症状の場合は、一般的に、3か月おきの治療を6回程度行うと完了する」というような内容で治療の見通しを伝えること
    単に治療の方針や見通しを伝える行為は、消費者が適切な判断をするための情報提供と考えられるので、消費者の選択の自由を妨げているとは考えられません。ただし、同一の病院で継続的に治療を受けることや、複数回分の治療費を支払うことを黙示的であったとしても同意させる場合には、実質的に消費者の選択の自由を妨げていると判断されるかもしれません。
  2. 「次は、2か月後にきてください」といって予約をとること。
    一般的な消費者の状態に応じて治療計画上の情報提供を目的としており、実際に来院するかは消費者の自由である場合は、消費者の選択の自由を妨げていることにはなりません。

ただし、次回以降の治療費も徴収している場合や、事実上強制しているような場合は消費者の選択の自由を妨げられていると判断される場合があります。

そもそも特定商取引法が適用される美容医療サービスに該当するのか、特定商取引法が適用される場合に、どのように対応したら良いのかについては、別途ご相談ください。

  1. 消費経済企画室「特定商取引に関する法律施工例の改正について」平成29年6月 houmuiinkai_siryou0216
  2. http://www.caa.go.jp/policies/policy/consumer_transaction/amendment/2016/pdf/amendment_171128_0001.pdf
  3. http://www.caa.go.jp/policies/policy/consumer_transaction/amendment/2016/pdf/amendment_171128_0001.pdf