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米国における化粧品規制に関する法律改正について

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MoCRA制定以来の大改正

アメリカでは、化粧品の安全性をより確実に担保するためにThe Modernization of Cosmetics Regulation Act of 2022 (MoCRA)が2022年に採択されました。化粧品に関する法律である連邦食品医薬品化粧品法(FD&C)が制定された1938年以来、FDAの化粧品規制権限を最も大幅に拡大するものであり、安全性を確保するのに役立つとされています。業界は法改正に伴う対応に追われている状況です。

以下、大きな改正点をいくつかご紹介します。

有害事象の報告義務

責任者(Responsible Person)は、当該化粧品の使用につき重大な健康に有害な事象(Serious Adverse Event)が発生した場合は15営業日以内にFDAに報告しなければなりません。責任者とは、Fair Packaging and Labeling Act第609条(a)またはFair Packaging and Labeling Act第4条(a)に従ってパッケージに記載されている製造者、包装業者、流通業者に該当するものをいいます。また、責任者がFDAへの最初の報告から1年以内に有害事象に関する医学的またはその他の情報を得た場合、責任者はこの新しい情報を15営業日以内にFDAに提出しなければなりません。なお、FDAは、査察中に有害事象報告書にアクセスすることができるとされています。

Serious Adverse Eventは下記のように定められています。

(A)下記の結果をもたらすもの

  • 死亡
  • 生命を脅かす事象
  • 入院治療
  • 継続的または著しい障害や無能力
  • 先天性異常または先天性欠損
  • 感染
  • 慣例的または一般的な使用条件下で意図された使用を除く、重大な顔貌変形(重度かつ持続的な発疹、第2度または第3度の火傷、顕著な毛髪喪失、または持続的または顕著な外見の変化を含む)

または

(B)上記(A)の結果を防ぐために、合理的な医学的判断に基づいて医学的または外科的介入が必要とされる事象

FDAには、以下の権限が与えられています。

記録へのアクセス: 一定の条件が満たされた場合、FDAは安全性記録を含む化粧品に関する特定の記録にアクセスし、コピーすることができるとされています。

強制リコール権限

FDAは、化粧品が粗悪品または不正な製品であり、その化粧品の使用または化粧品にさらされることにより、重篤な健康被害または死亡が発生する可能性が合理的に高いと判断した場合、責任者が自主的にリコールをすることを拒否すれば、強制リコールを命じる権限を有するとされています。

米国で製品を販売している事業会社である場合は、上記責任者(パッケージに記載されている製造者、包装業者、流通業者に該当するもの)に該当するかを確認し、該当する場合は、社内や販売先で有害事象の報告がすみやかに正確になされる仕組みを構築することが必要です。具体的には、どのような場合に、どこに報告しなければならないか周知し、社内でも報告があった場合の対応をすみやかにできるよう体制を構築することが考えられます。

化粧品施設登録

製造業者および加工業者は、FDAに登録し、2年ごとに登録を更新する必要があります。

FDAは、登録された施設によって製造または加工され、アメリカ合衆国で流通する化粧品が、人間に深刻な有害健康影響または死をもたらす合理的な可能性があると判断した場合、施設の登録を停止する権限を有します。また、FDAは、施設によって製造または加工された他の製品が、ある製品に絞り込むことができない不具合によって同様に影響を受ける可能性があると合理的に判断した場合、または施設で製造された他の製品に懸念を抱かせるほど十分に広範な不具合のため、施設で製造または加工される他の製品も同様の影響を受ける可能性があると判断した場合、登録を一時停止することができます。施設の登録が一時停止された場合、アメリカ合衆国で当該施設からの化粧品を流通または販売(あるいはその他の方法で交易に導入または納入)させることは禁止行為とされます。

化粧品リスティング

責任者は、販売されている全ての化粧品製品を、それらの成分を含めてFDAに提出し、毎年更新情報を提供する必要があります。これは、電子的に提出できます。

これらの施設の登録義務及び化粧品リスティング義務は、2023年12月29日の法定期限からさらに6ヶ月間、すなわち2024年7月1日まで、実施しない意向であり、これらの義務を遵守するための追加時間を提供するとされました。また、FDAは、2022年12月29日以降に初めて化粧品の製造または加工に従事した施設の所有者または運営者に対する登録、または2022年12月29日以降に初めて上市された化粧品に対するリスティングを、2024年7月1日まで実施しない意向であるとされました(2023年11月8日FDA発表)。

安全性の立証

化粧品を製造または販売する企業および個人は、その製品の安全性を確保する責任があります。なお、法律やFDAの規制は、個々の製品や成分の安全性を証明するための特定の試験を要求していません。

・責任者は、その化粧品の十分な安全性の立証を裏付ける記録を確保し、維持することが求められます。製造者は、製品の安全性を裏付けるために、すでに入手可能な関連安全性データを使用することができます。動物実験は、化粧品を販売するための必須条件ではありません。 しかし、安全性を裏付けるために使用されるすべてのデータが、科学的に確実な方法から得られたものであることが重要です。

・化粧品の安全性立証に関する詳しい資料は、 Product Testing of Cosmetics | FDA をご覧ください。

MoCRAはまた、FDAが制定する以下の規制を遵守するよう業界に求めています:

・化粧品を製造する施設に対する適正製造規範(GMP)要件。詳細はこちらをご覧下さい:

①パブリックミーティング 化粧品の適正製造基準に関する公聴会

Public Meeting: Good Manufacturing Practices for Cosmetic Products – 06/01/2023 | FDA

②業界向けガイダンス案 化粧品の適正製造基準

Draft Guidance for Industry: Cosmetic Good Manufacturing Practices | FDA

・香料アレルゲン表示要件

・タルク含有化粧品中のアスベストを検出・特定するための標準試験方法

免除

MoCRAは、一部の小規模企業をGMP、登録、および製品リストの義務から免除しています。ただし、以下の化粧品製品を製造または加工する製造業者または施設には免除は適用されません:

– 通常または一般的な使用条件下で目の粘膜と定期的に接触する製品。

– 注射される製品。

– 内部使用を目的とした製品。

– 通常または一般的な使用条件下で24時間以上外見を変えることを意図し、消費者による除去がその使用条件の一部でない製品。

また、医薬品および医療機器に関する条件が適用される特定の製品と施設にも、免除が適用されます。

まとめ

大きな改正ではあり、各社対応に追われている状況のようです。米国で販売している、または販売予定である事業会社におかれては十分に注意する必要があります。