2023年10月からのステルスマーケティング規制について:ニュースレター第16号
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目次
1.はじめに
消費者庁は、たとえばSNSなどを使って、広告主が広告であることを隠したまま宣伝する、いわゆるステルスマーケティングについて、2023年10月1日から一定の場合は、景品表示法違反になるとして、2023年3月28日付でその運用基準(「運用基準」)*を決定し、公表しました。すでに公開されているものでも、ステマの広告については、広告であることが分かる表示を付け加える必要がありますので、今から対応する準備をしておかなければなりません。
*「一般消費者が事業者の表示であることを判別することが困難である表示」の運用基準
今までは、たとえばインフルエンサーに対価を払って、口コミサイト、インスタやYouTubeで自社の商品について、自主的にほめているように投稿を依頼したていた企業も多くあると思います。2023年10月1日以降、その場合、それが広告であることを分かるようにしないと、違法になります。
2.一般消費者が事業者の表示であることを判別することが困難である表示
今回の告示の目的は、事業者の表示であるにもかかわらず、第三者の表示であると一般消費者に誤認される場合、事業者の表示であることが分かるようにするということです。
典型的な例としては、上記のように、第三者のSNS上や口コミサイトで、自己の商品を表示させることがあります。その場合には、第三者(投稿者)による表示ではなく、事業者(メーカー)の表示であることを記載する必要があります。第三者に依頼して、口コミ投稿を通じて、自らの競合事業者の商品について、自らの商品と比較した低い評価を表示させる場合も、事業者の表示であることを表示する必要があります。
事業者の表示であることを分かるようにすることが要求される「一般消費者が当該表示であることを判別することが困難であるか」どうかに当たっては、一般消費者にとって事業者の表示であることが明瞭となっているかどうか、第三者の表示であると一般消費者に誤認されないかどうかを表示内容全体から判断することになるとされています。
運用基準では、事業者の表示であることが分かりやすい表示となっている例として、
- ア 「広告」「宣伝」「プロモーション」「PR」といった文言による表示を行う場合。
- イ 「A社から商品の提供を受けて投稿している」といったような文章による表示を行う場合
が挙げられています。すなわち、インスタやYouTubeなど、第三者に自社の商品を宣伝してもらう時は、原則として、これらの表示をしなければならなくなるということです。
なお、事業者の表示であることが一般消費者にとって明瞭である又は社会通念上明らかである場合は、これらの表示をする必要がありません。表示をする必要がない例としては、①テレビ・ラジオのCM、②新聞紙の広告欄、③事業者自身のウェブサイトやSNSアカウント、④社会的な立場・職業等(例えば観光大使当)から、一般消費者にとって事業者の依頼を受けて当該表示を行うことが社会通念上明らかな者を通じて、当該事業者が表示を行う場合などが、挙げられています。
ただし、事業者自身のウェブサイト等であっても、実際には事業者が当該第三者に依頼・指示をして特定の内容の表示をさせたり、第三者に何らの依頼もせずに事業者自身で作成している場合は、専門家や一般消費者等の第三者の客観的な意見のように表示してはならず、当該表示が、当該事業者の表示であることを明瞭に表示しなければならないので注意が必要です。もちろん場合によりますが、上記アイに加え、「弊社から●●先生に依頼をし、頂いたコメントを編集して掲載しています。」という表示がその一例として示されています。
3.事業者の表示
今回規制の対象となるのは、外形上第三者の表示のように見えるものが事業者の表示に該当する場合です。それではどのような場合が、「事業者の表示」に該当するのでしょうか。
運用基準によれば、「事業者が表示内容の決定に関与したと認められる、つまり客観的な状況に基づき、第三者の自主的な意思による表示内容と認められない場合」です。
事業者が第三者に対して当該第三者のSNS上や口コミサイト上などで「こういうふうに言ってくれ」「当社の商品を誉めてくれ」というように、ある内容の表示を行うよう明示的に依頼・指示している場合典型的な例だと思います。
しかし、明示的に依頼・指示していない場合であっても、①事業者と第三者との間に事業者が第三者の表示内容を決定できる程度の関係性があり、②客観的な状況に基づき、第三者の表示内容について、事業者と第三者との間に第三者の自主的な意思による表示内容とは認められない関係性がある場合には、事業者が表示内容の決定に関与した表示とされ、事業者の表示となるので、注意が必要です。
これに該当するかについては、①事業者と第三者との間の具体的なやり取りの態様や内容(例えば、メール、口頭、送付状等の内容)、②事業者が第三者の表示に対して提供する対価の内容、③その主な提供理由(例えば、宣伝する目的であるかどうか。)、④事業者と第三者の関係性の状況(例えば、過去に事業者が第三者の表示に対して対価を提供していた関係性がある場合に、その関係性がどの程度続いていたのか、今後、第三者の表示に対して対価を提供する関係性がどの程度続くのか。)等の実態も踏まえて総合的に考慮して判断するとされています。
逆に、事業者が、第三者の表示に関与したとしても、客観的な状況に基づき、第三者の自主的な意思による表示内容と認められるものであれば、事業者の表示には当たりません。したがって、事業者の表示であることを示す必要はありません。
これは、表示の対象となった商品又は役務の特性等(例えば、特定の季節のみに販売数量が増える商品であるか。)の事情を考慮して、事業者と第三者との間に事業者が第三者の表示内容を決定できる程度の関係性があるか否かによって判断されます。
〈運用基準で、事業者が第三者の表示内容の決定に関与しているとされる例の一部〉
事業者が第三者に対してSNSを通じた表示を行うことを依頼しつつ、自らの商品又は役務について表示してもらうことを目的に、当該商品又は役務を無償で提供し、その提供を受けた当該第三者が当該事業者の方針や内容表示を行うなど、客観的な状況に基づき、当該表示内容が当該第三者の自主的な意思によるものとは認められない場合。
事業者が第三者に対して自らの商品又は役務について表示することが、当該第三者に経済的利益をもたらすことを言外から感じさせたり、言動から推認させたりするなどの結果として、当該第三者が当該事業者の商品又は役務についての表示を行う場合。
事業者が第三者に対して、当該第三者以外との取引の内容に言及することにより、自らの商品又は役務について表示すれば、今後の当該第三者との取引が実現するかのように想起させた結果、表示を行う場合。
事業者が第三者に対して、当該第三者が投稿すれば自らとの今後の取引が実現する可能性があることに言及した結果、表示を行う場合。
〈運用基準で、事業者が第三者の表示内容の決定に関与しているとされない例の一部〉
事業者が第三者に対して自らの商品又は役務を無償で提供し、SNS等を通じが表示を行うことを依頼するものの、当該第三者が自主的な意思に基づく内容として表示を行う場合
ECサイトに出店する事業者が自らの商品の購入者に対して当該ECサイトのレビュー機能による投稿に対する謝礼として、次回割引クーポン等を配布する場合であっても、当該事業者と当該購入者との間で、当該購入者の投稿(表示)内容について情報のやり取りが直接的又は間接的に一切行われておらず、客観的な状況に基づき、当該購入者が自主的な意思により投稿(表示)内容を決定したと認められる投稿(表示)を行う場合。
事業者が自社のウェブサイトの一部において、第三者が行う表示を利用する場合であっても、当該第三者の表示を恣意的に抽出することなく、また、当該第三者の表示内容に変更を加えることなく、そのまま引用する場合
4.おわりに
ステマは、欧米ではもうかなり前から規制されていました。消費者という立場からすれば、本当の評価を知りやすくなるという点で安心できる規制かもしれません。会社に対する信用を維持するためにも、早めの対応をお勧めします。