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アメリカにおける食品パッケージへの”Organic” “Natural” “Healthy”の表示規制について

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1.はじめに

アメリカでは、高級食材店に限らず普通のスーパーに行っても、「Natural」や「Organic」と記載された食品を日本より多く見かけます。そのような記載があるとつい安心してしまうものですが、アメリカでは、このような記載があったとき、正確には何を意味するのでしょうか。

食品・健康食品類をアメリカで販売したいという事業者様のために、アメリカでの食品表示規制について、「Organic」「Natural」「Healty」といった言葉が何を意味するのか、その規制について解説します。

2.食品における「Organic」表示

アメリカでは、連邦機関であるFDA(U.S. Food and Drug Administration)が、USDA(米国農務省)が規制している肉、家禽、加工卵製品以外の食品を規制しています。FDAは食品以外にも、薬品や化粧品も管轄しています。

FDAは今までも「Organic」表示の内容をルール化しようと試みてきましたが、現段階ではほとんど指針を示していないのが実情です。

そのかわりに、食品表示における「Organic」表示規制は、米国農務省(USDA)が管轄する全米有機プログラム(NOP)が行っています。すなわち、食品としてFDAの管轄下にありながら、Organic表示があると、Organic表示に関するUSDA NOP規制、及び食品表示と安全性に関するFDA規制の両方を遵守しなければならないことになります。

以下簡単にUSDAによるOrganic表示の規制についてご紹介します。

100% Organic:

  • 定義:すべての原材料および加工方法が認定有機である。
  • ラベリング:製品には USDA有機シール を表示でき、認証機関を記載しなくてはならない。

Organic:

  • 定義:原材料の少なくとも 95% (重量比)が認定有機でなければならず、残りの 5% は承認された非有機物質のリストから選ばれたものでなければならない。
  • ラベリング:製品は USDA有機シール を使用でき、認証機関を記載しなくてはならない。

Made with Organic [原材料について]:

  • 定義:原材料の少なくとも 70% が認定有機でなければならない。
  • ラベリング:これらの製品は USDA有機シール を使用できないが、前面ラベルに有機成分や食品グループを最大3つまで記載することができる。(例:「有機穀物使用」)。

70%未満の有機原材料:

  • 定義:製品の有機原材料が70%未満の場合、「有機」という用語は成分表でのみ有機成分を特定するために使用できる。
  • ラベリングUSDA有機シール は使用できず、製品全体が有機であると誤解を招くような表示はできない。

有機表示の一般的な要件:

  • 禁止事項:有機と表示されている製品は、遺伝子組み換え技術(GMOs)合成肥料農薬、または 放射線照射 などを使用して生産することはできない。
  • 認証:農場や企業は、認定された第三者認証機関によって認証され、有機として製品をラベル表示することができる。
  • 追跡可能性と記録保持:有機生産者は、生産から販売までのすべての操作に関する記録を保持し、製品の完全性を維持する必要がある。

なお、これらの表示基準に違反した場合、Organic表示に関して誤解を招くような表示、あるいは虚偽の表示を行った場合は、罰金や制裁を受ける可能性があります。

有機食品表示の主要なカテゴリーについてはこちらをご参照ください。米国農務省ウェブサイト

 3.食品表示における「Healthy」の使用

FDAによると、「Healthy 」という表示をする食品は、特定の 「栄養関連基準 」を満たさなければならないことになっています。

FDAが2022年9月28日に発表した「Healthy 」の定義案/規則によると、2020-2025年版「アメリカ人のための食生活指針」に基づいて、食品群またはサブグループ(果物、野菜、穀物、乳製品、タンパク質食品など)のうち、少なくとも1つの食品を一定量含むことを求めています。なお、含んではならない成分(例えば砂糖や脂質など)を一定量以上含んでいると、Healthyと表示できないことになります。

なお、この定義によると、生の野菜と果物は、その栄養素のプロフィールと健康的な食生活全体への積極的な貢献から、自動的に「Healthy」と表示することができます。

FDAは、Healthyの定義を変更することで、現状に即して、より健康的な食品供給を継続的に行うこと、消費者が口にする食品について、価値ある利用しやすい栄養・表示情報を提供することを目指しています。

健康増進のために、国としてむしろ積極的に摂取してもらいたい食品にHealthyと記載することでその食品を国民に推奨するという趣旨であるところは、Organic等の表示とは趣旨が異なる点です。

「Healthy」の表示の使用は任意です。現時点では、統一されたシンボルはありませんが、FDAではそのようなシンボルの作成も検討中のようです。

4.食品表示における「Natural」の使用

https://www.fda.gov/food/food-labeling-nutrition/use-term-natural-food-labeling

以上のように、米国では現状、FDAとUSDA(米国農務省)の両機関により食品表示を規制する結果となっていますが、「Natural」という用語の使用については、どちらの機関とも食品表示における厳格なガイドラインを設けていません。

しかし、食品成分および製造の状況が変化してきた状況に対し「Natural」という用語を今までのように使用することが妥当といえるのか、という点について論議はずっとありました。

例えば、2013年には、連邦裁判所により、遺伝子工学を用いて製造された原材料を含む食品、または高フルクトース・コーンシロップを含む食品を 「Natural」と表示できるかどうかについて、行政判断を求めらました。また、2014年には、「Natural」という用語の定義を求める3件の市民請願と、食品表示における 「Natural」という用語の使用を禁止するよう求める市民請願を受けました。

このような事情を背景に、2015年にFDAは、一般市民に対し、ヒト用食品の表示における「Natural」の使用に関する情報およびコメントの提供を要請しました。

実は、FTCは1970年代にも「Natural」という用語のルール化を検討したことがありますが、結局は、施行が困難であるとして1983年にはルール化を取り下げたという歴史もあります。

一方、FDAの上記のような方針に対し、USDAによるガイドラインでは、肉製品や卵製品について「Natural」と表示された製品は、人工成分や添加色素を含まず、最小限の加工のみを施した製品である必要がある、としています。

最小限の加工とは、製品に根本的な変化を与えない方法で加工されていることを意味します。さらに、ラベルには、「Natural」と記載した場合はその意味を説明する文言(「人工成分不使用、最小限の加工のみ」など)を記載しなければならないとしています。

これらのガイドラインに反すると制裁もありますが、あくまでUSDAが管轄する肉製品や卵製品に限られます。

結論として、アメリカにおける食品の「Natural」表示の規制はまだ過渡期であるといえます。

例えば、遺伝子組み換えや農薬を使って生産された製品でも、「Natural」と表示され得ることがあるといえます。従って、必ずしもその製品が他の選択肢よりも健康的であることを意味しないといえます。

5.おわりに

このようにアメリカでも、食品パッケージの表示については試行錯誤がされている状況です。ですが、要件に該当すれば、輸入商品でもこれらの表示を行うことができますので、食品類の輸出を検討されている場合は、マーケティング効果を考えると、表示を検討する価値はあるかもしれません。

この他にも、栄養補助/機能食品に関する規制もあります。

当記事では概要のみご紹介しましたが、より詳細に検討されたい場合は是非ご相談ください。

(なお、当記事執筆時の情報を元にしており、内容の正確性について担保するものではありません。)

 

 

 

 

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