ハラスメントを防ぐために Vol.1◆ハラスメントとは◆
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目次
1.ハラスメントとは何か
ハラスメントには、主に俗に言うパワハラ、セクハラ、マタハラの3種類があります。
それぞれの定義は下記のように各法律により定められています。
パワハラ
職場において行われる優越的な関係を背景とした言動であって、業務上必要かつ相当な範囲を超えたものによりその雇用する労働者の就業環境が害されること(労働施策総合推進法30条の2第1項)
セクハラ
職場において行われる性的な言動に対するその雇用する労働者の対応により当該労働者がその労働条件につき不利益を受け、又は当該性的な言動により当該労働者の就業環境が害されること(男女雇用機会均等法11条1項)
マタハラ
職場において行われる、その雇用する女性労働者に対する、妊娠・出産等をしたこと、もしくは妊娠・出産に関する制度・措置の利用を理由とした不利益な取り扱いを示唆すること、又はこれらに関する言動により、当該女性労働者の就業環境が害されること(男女雇用機会均等法11条の3第1項)
マタハラに関しては、育児介護法でも定めがあります。
職場において行われるその雇用する労働者に対する、育児休業、介護休業等の制度・措置の利用を理由とした不利益な取り扱いを示唆すること、又はこれらに関する言動により、当該労働者の就業環境が害されること(育児介護法25条第1項)
ハラスメントといっても問題となる根拠が複数ありますので、どの観点から問題となるのかを理解することが必要です。根拠は下記の4つが挙げられます。
1.明白な刑法上の違法行為
2.民法上の不法行為
3.行政法上定義されるハラスメント該当行為
4.企業秩序違反行為
それぞれは完全に別ではなく、こちらのイメージ図のように1から4に向かうにつれ、行為の包含性が広くなります。
ハラスメントに起因する問題
では、ハラスメントが起こると、どのような問題が生じるのでしょうか。
1,労働者の意欲の低下などによる職場環境の悪化
2,職場全体の生産性の低下
3,労働者の健康状態の悪化
4,休職や退職
5,これらに伴う経営的な損失
上記のような問題が連鎖的に発生することになります。ハラスメントによる上記損失を防ぐためには、予防が重要であり、ハラスメントが正確に何かを理解し日頃からそれを防止できるよう社内で意識徹底させることが必要です。それにより、万が一ハラスメントが起こっても、連鎖的な影響が生じる前に問題を発見し対策をとることで被害が大きくなることを防ぐことができます。
パワハラの例
それでは具体的にはどのような行為がパワハラに該当するのでしょうか。上記のとおり、労働施策総合推進法30条の2第1項上パワハラは、以下のとおり定義されています。
職場において行われる
①優越的な関係を背景とした言動であって
②業務上必要かつ相当な範囲を超えたものにより
③労働者の就業環境が害されるもの
以下、各項目についてさらに内容を整理してご紹介します。
優越的な関係を背景とした言動であって
- 当該事業主の業務を遂行するにあたって、当該言動を受ける労働者が当該言動の行為者とされる者に対して抵抗又は拒絶することができない蓋然性が高い関係を背景として行われるもの。
- 職務上の地位が上位の者による言動
- 同僚又は部下による言動で、当該言動を行う者が業務上必要な知識や豊富な経験を有しており、当該者の協力を得なければ業務の円滑な遂行を行うことが困難であるもの
- 同僚又は部下からの集団による行為で、これに抵抗又は拒絶することが困難であるもの
業務上必要かつ相当な範囲を超えたものにより
これは、「社会通念に照らし、当該言動が明らかに当該事業主の業務上必要性がない、又はその態様が相当でないもの」と定義されます。客観的に見て、業務上必要かつ相当な範囲内で行われる適正な業務指示や指導については、職場におけるパワーハラスメントには該当しません。具体的には以下のものがあります。
- 業務上明らかに必要性のない言動
- 業務の目的を大きく逸脱した言動
- 業務を遂行するための手段として不適当な言動
- 当該行為の回数、行為者の数等、その対象や手段が社会通念に照らして許容される範囲を超える言動
これらの言動にあたるかの判断にあたっては、下記の要素が総合的に考慮されます。
- 当該言動の目的
- 当該言動を受けた労働者の問題行動の有無や内容・程度を含む当該言動が行われた経緯や状況、
- 業種・業態
- 業務の内容・性質
- 当該言動の態様・頻度・継続性
- 労働者の属性や心身の状況、
- 行為者との関係性等、
なお、個別の事案における労働者の行動が問題となる場合は、その内容・程度とそれに対する指導の態様等の相対的な関係性が重要な要素となります。
労働者の就業環境が害されるもの
当該言動により労働者が身体的又は精神的に苦痛を与えられ、労働者の就業環境が不快なものとなったため、能力の発揮に重大な悪影響が生じる等当該労働者が就業する上で看過できない程度の支障が生じること。
これは、「平均的な労働者の感じ方」、すなわち、同様の状況で当該言動を受けた場合に、社会一般の労働者が、就業する上で看過できない程度の支障が生じたと感じるような言動であるかどうかが基準となります。
当該言動により労働者が受ける身体的又は精神的な苦痛の程度等を総合的に考慮して判断することが必要となります。
違法となるパワハラと違法とならない指導の違い
目的(心理状態)
パワハラ | 指導 |
相手をバカにする・排除する(いじめ、いやがらせ) 自分の目的の達成(自分の思い通りにしたい) |
相手を尊重する 相手の成長を促す |
業務上の必要性
パワハラ | 指導 |
業務上の必要がない(個人生活・人格まで否定する等) 業務上の必要があっても不適切な内容や量(罵倒など) |
仕事上必要性がある、又は健全な職場環境を維持するために必要なこと |
態度
パワハラ | 指導 |
威圧的、攻撃的、否定的、批判的 |
肯定的、受容的、見守る、自然体 |
タイミング
パワハラ | 指導 |
過去のことを繰り返す。 相手の状況や立場を考えない(大勢の前で叱責する等) |
タイムリーにその場で行う 受け入れ準備ができているか考える(場所の選択) |
誰の利益か
パワハラ | 指導 |
組織や自分の利益を優先 (自分の気持ちや都合が中心) |
組織にも相手にも利益が得られることを(組織の利益と個人の利益の接点を見出す) |
自分の感情
パワハラ | 指導 |
いらいら、怒り、嘲笑、冷徹、不安、嫌悪感 |
穏やかな、暖かな、きりっとした(毅然と)、好意 |
結果
パワハラ | 指導 |
部下が委縮する 職場がぎすぎすする 退職者が多くなる(特に若者) |
部下が責任をもって発言、行動する 職場に活気がある (育成と労働生産性の向上) |
現実には、パワハラと指導の境界線が曖昧な場面が多くあります。しかしながら、一度、ハラスメントの概念を頭で整理して従業員にも周知徹底させることで、ハラスメントを未然に防ぐ一助になると考えます。
ハラスメントは社内の士気に影響し、発生すると人間関係だけに解決はこじれる場合も多くあります。
お悩みの事例があったりした場合は早急にご相談ください。また、社内で研修を行うことも効果的です。研修も承っておりますのでお気軽にご相談ください。